目の仕組

 

見るということは、目で光の情報を検知し、それを脳で理解することである。人間が外界から取り入れる情報の90パーセントは眼からの情報といわれている。


目と脳の連携による視覚は、我々の行動を常に制御し、統率する基本的な感覚の一つである。意識して注視したものにせよ、意識しないで目に飛び込んでくるものにせよ、我々は視覚を通して位置や状態を算出し、この視覚的な情報から即座に行動を決定し、それらに対応して活動を行う。


視覚は、頭の前方中心にある二つの眼球と、視神経を通して繋がっている脳から構成されている。網膜の周りには色素をたくさん含み、血流の豊富な脈絡膜がある。

網膜の外側に視細胞があり、ここに光が当たると化学構造が変化してパルスを発生し、電気エネルギーに変換される。網膜により電気エネルギーに変換された電気エネルギーは、視路(視覚の通り道)を通り、この信号が脳に伝えられる。
感覚細胞が受けた刺激を脳に伝える神経細胞のところでは、神経回路綱が構成されており、情報の処理すなわち注視点の強調や変化分の抽出などの基本処理が行われている。


脳と眼球は至近距離で多数の並列信号線でつながれているので、非常に速い伝送が可能とである。また、網膜の中心部の視神経は細かく周辺部は粗くなっている。このためやたらと情報が多くなることはなく効率的である。電気信号が脳で情報処理されて初めて見えると言うことになる。

 

 

 

目の構造と働き

角膜は厚さ0.5~1mmの透明な膜であり、中央部は周辺部に比べやや薄くなっている目の黒目の部分であり、白目の部分である強膜と連続した1枚の強い膜であり眼球の外壁を構成する。

角膜の表面は涙腺から出る涙で常に濡れていて、透明性を持ち滑らかさを保っている。角膜が濁ると視力が落ち、凹凸があると乱視になる。

角膜の主成分は繊維状になったコラーゲンで、5つの層(①上皮②ボーマン膜③実質④デスメ膜⑤内皮)が整然と配列しているため透明で滑らかである。

角膜の働きは入射した光を屈折させ瞳孔を通して眼内に光を送ることである。目のレンズは角膜と水晶体の2枚であるが角膜では全体の屈折力の70%を受け持っている。

強膜は透明な角膜と連続した1枚の白く不透明な硬く強い膜であり、眼球の外壁を形成する。 

水晶体の組織は規則正しく並んだ蛋白質からなる透明組織である。レンズの働きをしており、実際に凸レンズのような形状をしており弾力性がある。

水晶体の周囲には毛様体という筋肉の多い組織が取り囲み、毛様体と水晶体はチン小帯により接続される。通常は約4mmの厚みを持ち近くを見るときには前にふくらむ機能を持つ。毛様体とチン小帯は、水晶体を支え、その厚さを調節する働きをする部分である。

近くの物を見る時は、毛様体の筋肉が縮み、水晶体に接続されているチン小帯が緩み、その結果水晶体への張力が減少して水晶体は厚みを増して光の屈折が強くなる。

一方、遠くを見る時は毛様体の筋肉が伸びて、チン小帯が縮んで水晶体への張力が増して水晶体の厚みが薄くなって光の屈折が弱くなる。いずれの場合でも網膜上に焦点を結ぶように作用する。

 

強膜の内側に脈絡膜があり、さらに脈絡膜の内側に網膜がある。

網膜の部位は、眼底と呼ばれる。角膜から入った光は水晶体、硝子体を通り網膜に達する。網膜には光が当たった時、化学構造が変化してパルスを発する視細胞と呼ばれる細胞群があり、網膜の一番外側ぴっちりと並んでいる。

網膜は光を受容して情報処理を行う神経組織であり、大きく分類して視細胞、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、出力ニューロンである網膜神経節細胞に分けられる。

網膜で処理された情報は、脳に運ばれさらに詳しく処理される。網膜は発生学的に見ると、脳の突出であるのであるので中枢神経系に分類せれる。
目は眼球とその後部の視神経に大別される。眼球は視覚の入り口であり。黒目の部分は透明な角膜で構成されており、その後ろに虹彩がある。虹彩の間に瞳孔(瞳)が透けて見え、光に対し、絞りの役割をしている

視細胞は錐体と桿体 色の識別は錐体

視細胞には錐体と桿体(かんたい)の2種類がある。錐体は網膜の中心部に多く、明るいと良く機能し、色の識別が可能である。錐体の細胞数は約700万個ある。


暗いところで見えるのは桿体の働き 色の識別は不可

桿体は網膜の周辺部に多く、光の強弱に感受性の高い細胞で、暗い所でも機能するが色(波長)の判別は出来ない。

光に反応する桿体の色素はロドプシンと呼ばれて、可視光線を吸収すると一連の化学反応を通して光エネルギーを電流に変換する。

桿体の細胞数は約1億3000万個もある。網膜の中心は黄色く凹んでいて、その部分は黄斑、中央の凹みが中心窩であり、中心窩には錐体が密集しており最も敏感に光を感受する。

桿体、錐体共にある程度の数の細胞が集まって受容野と呼ばれる小部分を形成し、受容野ごとに神経節細胞が担当し、神経繊維となる。受容野にはタイプとしてオン型とオフ型がある。オン型は受容野の真中に光が入った時に興奮し、周りに光が当たると抑制を起こす。オフ型は逆に周りに光が当たると興奮する。


 物が動いたときだけ良く見える


物が動きが生じた時にだけ反応するタイプの受容野もある。動く物にだけ反応する細胞群には縦、横、斜めの動きに対応した別々の細胞群がある。

視界の周辺部では視力0.1程度の分解能しか持たないので、例えば動かない対象物である机に止まっているハエは認識できないが、それが飛び立つとこの動きに敏感な細胞群が反応してハエの存在を見つける事が可能となる。
また、逆に全く動かない物は無視するような処理を行っている、例えば網膜の血管は視細胞の前面を通過しているが、我々はこれを認識せずに、かつ、この部分で他の画像を普通に認識している

目と脳の連携

脳との連携については別途詳しく記述する。
覚には目と脳の連携が欠かせない。目は単なるセンサーでなく脳の一部として機能している。

目の光学系は角膜と水晶体の2つのレンズのみの単純な構成でゆがみの無い画像を得ている。これを可能にしているのは、極めて高性能の画像処理を脳が行っているからである。


膜に映った映像は写真と同様である。しかしながら人間の目の画像認識はそれとは少々異なっており、脳と連携して総合的な判断力をもつ。最も簡単な例は、目の前の物体を見ながら首を振っても、目の前の物体はちゃんと静止して目の前に見える。体を横たえてみても物体はちゃんと以前と同じように直立して見える。また、外を歩く人を見た時、映像としては手前の人の方が大きく、遠くの人は小さく映っている。しかし、小さく見える遠くの人でも大きい人、大きく見える近くの人でも小さい人と認識する

スペクトルが変わっても同じ色と認識する

暗い場所で白いものを見ても白く見えるし、明るい場所で白いものを見ても同じ白色として認識可能である。例えば、照明光が屋内光から昼光に変化すると、物体表面で反射されて眼球に到達する光のスペクトルは変化するが、同一物体に対する色知覚は安定している。この現象は色恒常性と呼ばれる。